2023/11/27
連載『スポーツ情報って面白い!』?/日本の先進的スポーツ情報テクノロジー「ボリュメトリックビデオ技術」について
日本の先進的スポーツ情報テクノロジー「ボリュメトリックビデオ技術」について
米国のメジャーリーグベースボール(以下、MLB)は、ソニー傘下の英国Hawk-EyeInnovations社(以下、ホークアイ)のプレー分析サービスを、2020年シーズン(この年は7月開幕)から、全米30球場で導入しました。ホークアイの画像解析技術とトラッキングシステムでは、ボールや選手の動きをミリ単位の正確さで捉えてリアルタイムにデータ化します。12台の高解像度ハイフレームレートカメラの映像を同期させるので、従来のトラッキングデータに加えて、三次元骨格データ計測による、選手の姿勢や動きを毎秒30コ
マのリアルタイムで解析できます。これにより、投手?打者のフォームや投球内容、打球?バットの軌道、野手や走者の動き等、フィールド上での全てのプレーをより精密に確認?評価することが可能となりました。MLB のスタットキャストが、さらに進歩したと言えます(引用文献1)。
このホークアイによるトラッキングシステムは、ソニー傘下とはいっても英国企業の技術ですが、日本企業による先進技術も開発されています。それは以下に述べる「ボリュメトリックビデオ」の技術です。「ボリュメトリックビデオの特徴」は、開発元のキャノン株式会社のWeb サイトによれば以下の通りです(引用文献2『』内は引用)。
『ボリュメトリックビデオ技術とは、撮影画像から3D空間データを再構成する技術です。複数のカメラで撮影された映像をつないで切り替えるのではなく、3D空間データを生成することが特徴です。 3D空間データであるため、空間内の自由な位置、角度からの映像コンテンツを生成でき、3D空間データを変換することで、2Dの自由視点映像、3D空間データを活かしたVR/ARコンテンツなど、様々なアウトプットを提供することが可能です。 』
このシステムによって、例えば試合中の野球スタジアムの映像を、スタンドから多数(98台)のビデオカメラを用いて360度撮影し、それらをほぼリアルタイム(3秒)でコンピュータで合成しながら、一つの3Dデータ(3次元データ)を生成することができます。
その3次元データを再生すれば、ゲームの自由視点映像として視聴することが可能となります。好きな方向から閲覧可能ということです。あとでゆっくり振り返ることもできるし、1つのプレイが終わったすぐあとに、リプレイのかたちで見ることも可能です。
実際の撮影結果がYouTubeで公開(引用文献3)されていますが、とても興味深い映像ではあるものの、まだ処理が追い付いていないような気もしました(選手のエッジが曖昧というか、ぼける感じがある)。でも、今後の映像取得技術や映像処理技術の進歩によって、より実用的なシステムへの発展が期待されると感じました。
「自由視点映像」自体は、米国メジャーリーグ?ベースボールも既に導入していますが、こちらはスタジアムに設置した多数のカメラの映像を瞬時に切り替えて、さまざまな視点からリプレー映像が見られる技術です。一方、キャノン株式会社のボリュメトリックビデオシステムは撮影した空間全体を3Dデータ化するため、フィールド内のどんな場所にも「仮想カメラ」をおいて、そこからの視点でプレーを見られる点が大きく異なります(引用
文献4)。
以上のように「ボリュメトリックビデオ技術」は日本独自の先進的なテクノロジーです。
まだまだ発展途上の技術のようですので、すぐに大学で導入するのは難しいかもしれませんが、野球だけでなくほかのスポーツへの応用も含め、将来的には非常に期待されます。
スポーツだけでなく、娯楽分野への応用もあるよう幅広いです。ただ覚えにくく発音もしづらいので、いい愛称ができればいいですね。
【引用?参考サイト】
1)MLBがホークアイのプレー分析サービスを2020年シーズンから全球場で導入 リアル
タイム解析した精密なデータを球団やファンに提供, ソニーグループ
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press/202008/20-0821/ (2023/11/24閲覧)
2)ボリュメトリックビデオ技術とは, キャノン株式会社
https://global.canon/ja/vvs/about/ (2023/10/15閲覧)
3)日本テレビ系プロ野球中継撮影に協力, キャノン株式会社
https://global.canon/ja/vvs/works/works-live-baseball.html (2023/10/15閲覧)
4)大リーグの先行く巨人戦、キヤノンがカメラ98台の自由視点映像を3秒で生成, 内田
泰, 日経クロステック, 2023.04.17
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07936/ (2023/10/15閲覧)